潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis、UC)は、大腸や直腸の内腔に炎症が生じ、潰瘍が形成される慢性の炎症性腸疾患の一つで近年急速に増えている疾患です。
1973年に難病指定され、当時は数千人だった患者数が、現在日本では20万人を超える勢いで増加しています。
アメリカでは100万人以上もの患者がいると言いますから、欧米化した生活スタイルが大きく関与しているのではないかと推測されます。
西洋医学的には、その具体的な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下のいくつかの要因が関連している可能性があると言われています。
- 免疫系の異常反応: 免疫系が本来の役割を超えて過剰に反応し、腸の組織に攻撃を仕掛けることが考えられています。自己免疫疾患と呼ばれ、潰瘍性大腸炎もこれに分類されます。
- 遺伝的因子: 遺伝的な要因も潰瘍性大腸炎の発症に関与している可能性があります。家族歴がある場合、発症リスクが高まることが報告されています。
- 環境要因: 環境の影響も関与していると考えられています。喫煙や特定の食事習慣がリスクに影響を与えることが示唆されていますが、これについてはまだ十分な科学的な証拠がありません。
- 腸内細菌叢の変化: 腸内細菌叢(腸内フローラ)が潰瘍性大腸炎の発症に関与している可能性があります。腸内のバランスが崩れ、免疫系の反応に影響を与えることが考えられています。
どういった症状が出るのか?
潰瘍性大腸炎の症状は、炎症が生じた腸の部位や程度によって異なることがあります。
症状は軽度なものから重篤なものまでさまざまですが、一般的な症状には以下のようなものがあります。
- 下痢: 血便や粘液が混じった下痢が主な症状です。これは大腸の内腔が炎症によって傷つき、粘膜が損傷する結果として起こります。
- 腹痛: 腹部の痛みや不快感が起こります。これは炎症が腸壁に影響を与え、筋肉が過度に収縮することによるものです。
- 血便: 大腸の炎症により、便中に血が混じることがあります。これは便の色が赤みを帯びたり、便器に血が見られたります。
- 体重減少: 食欲不振や栄養吸収の障害により、体重が減少することがあります。
- 疲労感: 慢性的な炎症と症状により、疲労感や体力低下を訴える事があります。
当院ではどのように原因を捉えているのか?
当院では東洋医学的な視点でお身体の状態を鑑別し、潰瘍性大腸炎に関しては高い改善率を誇る疾患として捉えております。
結論から言うと
大腸に関する様々な症状は肺の機能低下が原因と考えています。その為、呼吸器の機能を高めるような治療をすると大腸の症状が出づらくなっていきます。
まず具体的にどの様にお身体の状態を鑑別し、そういった見解に至っているかという所から述べていきます。
当院では↓に添付している色体表というものを用いて診断を行っています。
(五行)色体表とは何か?
自然界におこる現象を代表的な5つ「木」「火」「土」「金」「水」に分類した東洋哲学の一つです。
この五つの現象に、世の中の物を紐付け分類してまとめたものがこの五行色体表と言えます。
2000年以上前から言い伝えられている、先人の叡智の結晶だと考えています。
例えば、身近で耳にする言葉の一つとして、五臓六腑の「五臓」が挙げられ上の表を元に下記の様に分類していきます。
「木=肝臓」「火=心臓」「土=脾臓」「金=肺」「水=腎臓」
実際の身体で考えてみた際に、自身の体質が五行のどこに属するか、また近しいかを調べていくことで、関連していそうな愁訴や症状等を見つけ出すことが出来るのです。
例えば鼻炎のような鼻の症状が出現したとします。
「鼻」は「五官」でいうと「金」に属しているので、同じく「金」に所属する「肺」に症状があるかもしれないと考えます。
上述した様に、自然現象から身体現象まで様々な自然界におこる出来事を5つに分類し、類似するグループ同士を集め、お身体の状態を鑑別していく色体表ならではの考え方です。
この表に当てはめてお身体を診断していくと、潰瘍性大腸炎(五腑)の症状がある方は、
肺(金)のグループに関する症状が1つ以上該当しているケースがとても多く、潰瘍性大腸炎以外の不調を抱えているケースがほとんどです。
そのため潰瘍性大腸炎以外の症状も細かく問診し、色体表を参考に主訴以外の症状も意識しながらまとめて治療していく事を重要視しております。
具体的には鼻の症状(副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、後鼻漏、嗅覚障害など)や皮膚の症状(アトピー性皮膚炎、帯状疱疹、円形性脱毛症、乾燥肌などの状態異常など)や呼吸器の症状(喘息、肺炎、風邪をひきやすいなど)
などがないかを確認します。
また色帯表の五労という項目の「臥」という字の意味は横になって寝るという意味です。
長時間横になって寝た後に症状が出る、つまり朝の寝起きに何かしらの症状が出やすい事が多い傾向にあるのも特徴になります。
その他にも、五味という項目に載っている辛いもの好き嫌いがあったり、五志という項目に載っている憂い(悲しい、憂鬱、切ないなどの意味)という感情をきっかけに発症したりと
様々な視点から総合的に状態を鑑別していますが、圧倒的に肺(金)のグループに関係する症状をお持ちの方が多いです。
それを踏まえて治療していくわけです。その為、大腸に症状があるからお腹に鍼をしたりお灸をするという事ではなく、肺の機能を高める様なツボに刺激を加え呼吸器の機能が高まると潰瘍性大腸炎の症状が出づらくなってきます。
また鼻や皮膚などの症状がある場合、肺の機能が高まるとまとめて症状が改善していく傾向にあります。
まとめ
- 潰瘍性大腸炎は東洋医学的な視点で見た場合、肺の生理作用などの機能が落ちている事で出ているケースが多い。
- 難病指定されている疾患ではあるが、鍼灸治療では得意な疾患の1つである。病名に踊らされず、状態を正確に鑑別する事が大切。
- 潰瘍性大腸炎以外にも症状を抱えているケースが多い為、その他の症状も併せてまとめて治療していく事が大切。
今回の投稿は以上になります。
次回は潰瘍性大腸炎を改善していくにあたって最も重要な事という内容で投稿致します。